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「闘いとってきた変化」

今朝(5/23)の朝日新聞に掲載されたジェンダー研究のパイオニア,上野千鶴子氏(社会学者)の文章が示唆に富んでいたので,一部をブログで紹介したい。

『「からかい」や「いたづら」をセクハラと名付け,「痴話げんか」をDVと名付けて,女性の経験を再定義してきたのは,フェミニズムである。
「痴漢は犯罪です。」というポスターを東京都の地下鉄で見たときの感動は忘れない。
これらは日本の女性運動の達成した成果である。
変化は自然現象のように起きたのではない,闘いとってきたのだ。
学問は何のために役立つのかと言われながら,女性の経験の言語化と理論化に努めてきたのが女性学・ジェンダー研究だった。』

長年にわたる粘り強い運動の積み重ねが社会を少しずつより良く変えるのであり,自然に変わっていくことは期待できない。
社会をよりよく変えたいのであれば,待っているのではなく闘いとるという意識が必要。

上野氏の記事から,分かり易い結果を求めがちな昨今の自分を振り返る切っ掛けを頂いた。

では,法律家は何に役立つのか。

日々自問自答しながら仕事に臨みたいと思う。

弁護士 西ヶ谷 知成

憲法集会にて。

昨日は憲法施行71年目を迎える憲法記念日。

静岡市でも憲法集会が開かれ500人が集まりましたが、そこでスピーチをするよう事前に依頼されていました。

スピーチ用の原稿を作成しましたので、ブログにアップさせていただきます。

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私は静岡市で弁護士をしている西ヶ谷知成と申します。
静岡県憲法9条の会の事務局長を務めている関係で、本日お話しさせていただく機会をいただきました。

まず、この静岡県憲法9条の会について、少しだけ紹介させてください。
「9条の会」と名が付く組織は静岡県内にも多数ございまして、私が把握しているだけでも70くらいございます。
その県内の「9条の会」の横のつながりを作るために2004年に作られたのが、静岡県憲法9条の会です。
この静岡県憲法9条の会は、近時は休眠状態となっておりましたが、第2次安倍政権下で9条が危ない、ということで、昨年再結成されました。

主な活動といたしましては、今年2月25日に伊藤真弁護士を招き集会を行ったほか、2~3ヶ月に1度、各地の経験交流を目的とした意見交換会を行っています。

先日行われたこの意見交換会で印象深いやりとりがありましたので、ここで紹介させていただきます。

まず、ある方から次のような問いかけがなされました。
「改憲反対のための多くの署名を集めるためには、賛同者だけからだけ集めていても達成できない。意見の異なる方にも積極的にアプローチしていかなければならないと思うが,どのようにやっているのか。」。
そのような問いに対して、ある方から次のような意見が出されました。
「私は時間がかかっても、諦めずにねばり強く対話をしている。1件に30分、1時間かかることもある。どれだけ時間がかかっても途中で切り上げるようなことはしない。」。
私は、その意見を聞いて大変驚きました。意見が違う方に賛同の署名を求めることが無理であれば、早々に引き上げて次にチャレンジした方が多くの署名を集めることが出来ます。
でもその方はそのような効率重視ではなく、時間がかかってでも対話を重視する姿勢を貫いている。
私は、まさに、こういう人とのぶつかり合いを恐れないで粘り強く対話を続ける地道な活動こそが、より良い社会へと換えていくための原動力になるのではないか、ということに気づかされました。
この方の姿勢に大変感銘を受けましたので、今日の機会にご紹介させていただきました。
なかなかまねできないことだと思いましたが、きっと今日お集まりの皆様の中にも、このような活動を行っている方もおられることと思います。私も少しでもこのようなすばらしい活動に近づけるよう、自分なりにがんばっていきたいと思います。

今日現在、政治情勢は流動的であり、改憲の動きが今後どうなるかは分かりません。
しかし、憲法9条が掲げる非武装平和主義は、世界に向けた日本の約束であり、戦争犠牲者の魂の叫びであり、人類の道しるべでもあります。
私たちの世代でこの非武装平和主義の理想を捨てるわけにはいきません。私たちには、次世代にこの普遍的価値を引き継ぐ義務があります。
ですから,改憲に向けた動きが鈍ったとしても、それで終わりではありません。

憲法12条には次のような定めがあります。
「この憲法が国民に保障する自由及び権利は,国民の不断の努力によって,これを保持しなければならない。」
権力者による憲法破壊,立憲主義破壊の怖さを肌身で感じた今の時代ほど,この条文の重みを感じさせられたことは,これまでなかったのではないでしょうか。

ですから、皆さん、これからが大切です。
ともに不断の努力を重ねていこうではありませんか。

皆さん、共にがんばっていきましょう。

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もちろん当日は紙を見ずに暗記して話しましたよ(^^)v
SBSが夕方のニュースで報道してくれました。深謝。

弁護士 西ヶ谷 知成

無料法律相談,がんばります。

弁護士の西ヶ谷です。

ここ半年ほどは多忙を極め,ほぼ毎日申し込まれる新規相談や電話相談のほとんどを断らせていただいていました。

お困り事を抱え,また数ある弁護士事務所のなかでせっかく当事務所を選んでいただいたにもかかわらず,そのお気持ちにお応えすることできず,大変申し訳なく思います。

当事務所は,弁護士業界の敷居を下げ,市民に最も身近な法律事務所を目指して6年前に設立されました。
しかし近時,日々の業務に追われ,発足当初の理念から少しずつズレてきてしまっているような気がしています。

昨年末に新人弁護士も入り,当事務所は弁護士3名体制となりました。
多くの皆様のお役に立てる事務所となるよう,発足当初の理念に今一度立ち返り,「市民第一主義」の旗印のもとで,無料相談やご依頼いただいた事件に精いっぱい取り組んでいきたいと思っています。

弁護士 西ヶ谷 知成

「あなたたちの沈黙が私たちを殺す」

昨日の朝,こたつでお茶をすすりながら目にした新聞記事の見出し。

「あなたたちの沈黙が私たちを殺す」

シリア内戦で反政府派の拠点がアサド政権側から激しい空爆を受け,住民数百人が犠牲になったというニュース。
この言葉は死にゆく男性からの最後のメッセージだったという。

そういえばその前夜のニュースで,負傷したり死亡したシリアの子供たちの映像が映されていたことを思い出した。

その映像を見て痛ましさを感じつつも,「内戦がここまで激化してしまうと,どうしようもないよな・・・」などと,半ば自分への言い訳めいた感想を心中に抱いたことを思い出した。

その翌朝の記事の見出しがこれだったので,まさに「あなた」=自分のことを言われたような気がして,それ以来,この記事のことが頭の片隅からずっと離れない。

なので,まとまらないことを承知でブログに書くことにした次第。

では自分に何ができるのか。

何もできない。現場に行って救護活動を手伝うことすらできない。

ただ,こういう悲惨な事態を繰り返さないためにはどうしたらいいのか,ということを真剣に,誠実に考え,それを発信する程度のことは私にも出来ると思った。

まず,シリア内戦が拡大してしまったのは,ISの出現と,対立している双方当事者の背後に大国がいること。
もともとは「アラブの春」つまり中東民主化の流れの中で,民主化を求めていた反政府派がアサド政権を追い詰めたが,ISが出現して三つ巴の内戦となってしまい,またロシアやフランスがアサド政権側につきアメリカが反政府勢力を支援するなど大国が干渉し,内戦が激化した。
大国の狙いは様々だが,中東での覇権拡大が大きな理由の一つ。

まずは,このような大国のエゴを容認するような世界情勢を変えねばならない。
武器で儲かる死の商人が政治を牛耳っている点も原因の一つだ。

では,このような世界を変えていくために,必要なことは何か。
やはり,それは,武力の行使を禁じた日本国憲法9条の理念を世界に広めていくことではないか,と私は考える。

いま,憲法9条を変える動きが議論されているが,憲法に自衛隊を書き込まねば自衛隊員がかわいそうだ,などというちっぽけな感情論ではなく,今の憲法が持っている非武装平和主義の価値を理解し,その非武装平和主義の理想を実現する努力をすべきだと思う。
改憲をするのではなく,今の憲法の理念を実現する,という方向性だ。

軍事力による威嚇は,相手に恐怖心を与えて紛争ぼっ発の危険を高めこそすれ,真の平和にはつながらない。

それは北朝鮮に対しても同じ。

北朝鮮とも対話ができるような環境を,周辺国と協同して作っていくことが必要。
中国は北朝鮮に対してまだ影響力があるし,今の文政権の韓国とも手を組めば融和ムードは高まる。
だから,非現実的な話などではなく,努力していく価値は十分にある。

また,北朝鮮の硬直姿勢を解くためには米軍基地の縮小,撤去も必須だ。

他方で,トランプ政権のアメリカに追従してくことが最も平和から遠のくことであることは明らかだ。

大河の一滴に過ぎない自分ではあるが,9条の理念を実現するためにどうあるべきか,ということにこだわって生きていこうと思う。
これが,死にゆくシリア男性のメッセージに対する,自分なりの答えである。

弁護士 西ヶ谷 知成

常葉学園に勝訴。

弁護士の西ヶ谷です。

先日,約3年闘ってきた常葉短大准教授の解雇事件で,勝訴が確定しました。

信念をもって闘ってきた准教授ご本人,また准教授を支えてきた多くの支援者の皆様に敬意を表します。

最高裁までいったこの事件。
県内最大級の学校法人内で起こった事件ということもあり,マスコミにもよく取り上げられました。

マスコミの中で一番熱心だったのは,意外にも読売新聞。
同紙は安倍政権べったりで,もはや政府の機関紙に成り下がってしまっていますが,それでも地方の記者さんには真摯に事件を追いかける姿勢があり,好印象でした。

解雇無効が確定し裁判自体は終わりましたが,実はここからが正念場。

准教授がしっかりと復職を果たせるように,また学内でパワハラ等受けないように,代理人としてしっかりと対応していこうと思っています。