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橋下氏の公務員政治活動規制に反対する。

大阪市の橋下徹市長が提案している「市職員政治活動制限条例案」に対し,大阪弁護士会は、7月20日付で,制定に反対する旨の会長声明を出した。

橋下氏が提案するこの条例案によれば,市職員が時間外や休日に原発稼働への意見を述べることや、再稼働反対のデモ行進の参加することも禁止対象になりかねない。
しかも,条例に違反した場合には懲戒免職まで可能とされている。

大阪弁護士会の会長声明は,これらの点について指摘し,橋下氏が提案する条例案は地方公務員法の規制を超えて厳しい制限を課すもので,憲法や地方公務員法に違反する疑いがあるものである,とする。

私たち弁護士は,司法試験の憲法科目で,表現の自由や政治活動の自由を含む精神的自由というものが憲法が保障する自由権の中で最も大切なものあり,また,最も傷つけられやすいものでもある,ということを叩き込まれる。
言論を封じて,より恣意的な政治をやりやすくしたくなるのが権力者の欲求。
その権力者の欲求から言論の自由を守り,言いたいことが言える自由な社会を築く。
それが憲法の目指す社会であり、我々弁護士もまた目指すところである。

弁護士出身の橋下氏がこのような憲法の基本を踏みにじる条例の制定を目指すこと自体に強い違和感を覚えるが,それに対して,大阪弁護士会が,条例制定前に,橋下人気に臆すことなく会長声明を出せたことは,弁護士会が社会の中であるべき役割を果たしていることの表れであると思う。

橋下氏の条例案は市職員を対象にしているが,この対象者が今後拡大し,いつの日か一般市民の言論も封殺される日が来るかも知れない。その頃には誰も「反対」を言えなくなっている・・・。これが「ファシズム」の怖さである。ヒトラー政権下のドイツ,ムッソリーニ政権下のイタリア,戦中の日本のファシズムによって多くの罪なき人々が殺されたことは周知のことである。

橋下政治にはこのファシズムの怖さを感じざるを得ないのである。

西ヶ谷知成