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内部通報訴訟に勝利。

4年がかりで取り組んできた事件が無事解決できたので報告したい。

内部告発をしたことにより,降格・退職処分とされた労働者が,
処分の無効を訴えて訴訟で争ってきた「県民厚生会事件」。

一昨日,ようやく東京高裁(控訴審)で,相手方である県民厚生会側が
当方に約1088万円を支払う内容で,和解が成立した。
この手の事件で1000万円を超える金員が支払われるのは
極めて異例であり,勝利和解であることは間違いない。

多くの新聞(読売,毎日,中日,静岡)も,今日の朝刊で,こぞって
この事件の顛末を,比較的大きく報道してくれた。
多くの方に知ってもらい,他山の石としてもらえたら幸いである。

この事件は,約4年前に県民厚生会が経営する特別養護老人ホーム
「きらら藤枝」内で起きた。

施設長だった宮田さん(ボクの依頼者)が,社会福祉法人である
県民厚生会内部の不正を,監督官庁である静岡県に通報したことが事の始まりだった。

県から指導を受けた県民厚生会は,すぐに犯人捜しにとりかかり,
宮田さんが内部告発者であることが判明するや,そこから宮田さんに
対する凄惨な嫌がらせ,パワハラが行われるようになった。

その結果,宮田さんは数ヶ月後にはうつ病を発症し,休職に追い込まれた。

すると,県民厚生会は,宮田さんを施設長の地位から突如降格させ,
その後,こともあろうか,休職期間満了により退職処分を下してしまったのである。

裁判は,元事務所後輩の栗田勇弁護士に手伝ってもらい,
弁護士二人体制で取り組んできた。

静岡地裁の第一審判決では,パワハラについては証拠が足りず
認められなかったものの,宮田さんのうつ病発症が県民厚生会側の
責任によるものであることが認定された。

県民厚生会側は第一審を不服として控訴した。
しかし東京高裁は,第一審の結論を維持することを明言し,それを前提に
高裁から提示された和解案を県民厚生会側が受け入れ、
今回の勝利和解となった。

正直に言うと,4年前に初めて宮田さんから相談されたときには,
「負け」を直感した。
一般に,パワハラはそれを裏付ける証拠がないことが多いため
勝つのは難しく,それに加え,この事件でこちらの手元にあるのは,相手に有利な証拠ばかり。
しかも,福祉分野特有の専門用語も連発され,理解が追いつかない・・・。

しかし,最初に相談を受けたときの「負け」の直感は,
見事に裏切られることとなった。
勝利を信じ,人生をかけて取り組んでこられた宮田さんのお気持ちに
答えることができて,ホッとしている。

長い闘いだったが,この結論は,弁護士だけで勝ち取れたものではない。
本人の勇気,関係者の協力,労働組合の組合活動などが一体となって
勝ち取ったものである。
他人の問題を自分の問題としてとらえ,協力を惜しまない多くの人たちの
良心にも触れることができた。

今回もまた,大いに勉強をさせて頂いた。

弁護士 西ヶ谷 知成