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「特定秘密保護法案」から見えてくるもの。

週明けから国会で本格的に審議される特定秘密保護法案。

この法案は,防衛や外交等に関する情報について,行政機関の長が
「漏洩すると国の安全保障に著しく支障を与える恐れがある」と判断した
情報を「特定秘密」に指定し,「保護」するというもの。

漏洩させた公務員らへの罰則は最高で懲役10年と,重い。

この法案については既に多くの問題点が指摘されているが,
最大の問題は,国民にとって重大な情報を国民自身が得ることが
出来なくなることであろう。

政府が指定する「特定秘密」は,国会議員であっても
原則として知ることができず,したがって議論も出来ない。
つまり,何が秘密とされているかさえ,国民に秘密にできるのだ。

国民が政治判断に必要な情報を得ることが出来なければ,
当然投票行動にその情報を反映させることができず,民主主義は歪む。

民主主義によって選ばれた国会議員が,民主主義を歪めさせるこの法案を,選挙の争点にもなっておらず国民の間での十分な議論や理解も
ないままに通そうとしていること自体に,まずは大いに疑問を感じる。

そして,この法案が通れば、「安全保障=国益」を錦の御旗に,
為政者にとって都合の悪い軍事情報が闇に葬られることとなる。

特に,軍事機密である自衛隊や在日米軍の実態が,
今以上に見えにくくなることは明らか。

改憲で国防軍の創設を目指し,また「積極的平和」などと称して米軍との
共同軍事行動を目論む現政権にとっては,今後生じるであろう不都合な
真実を覆い隠すために,どうしても通したい法案なのであろう。

近時の改憲に向けた流れと特定秘密保護法案を合わせてみれば,
現政権が目指している日本の姿は自ずから見えてくる。

それは,  「国民に内緒で,海外で人殺しが出来る国」  である。

他国の紛争に米軍とともに軍隊を送り込む日本。
しかも,その国の戦争被害などに関する重大な情報は日本国民に知らされず,したがって日本国民は「正義の戦争」と思い込み,
国内に反戦の気運が高まらない。

このまま進めば,このようなことになる。

戦争をやりやすくするための「特定秘密保護法案」。

だから,この法案を黙って通させるわけにはいかないのである。

弁護士 西ヶ谷 知成