最近,久々に名著に出会った。
それは,湯浅誠著『ヒーローを待っていても世界は変わらない』だ。
まさに,民主主義の教科書ともいうべき本。
この本で,湯浅さんは,橋下氏をはじめとする強いリーダーシップに
政治を委ねたくなる国民の精神構造を鋭く分析しているが,
社会の多様性に関しては,次のように述べている。
『 人々が一人ひとりの「民意」を社会に示すことで,社会は多様な「民意」を示すことが出来る社会に変わります。
それをお互いが調整していくことで,異なる意見の人が調整できる社会に変わっていきます。
(中略)
誰に対しても,意見交換や調整を頭から否定すべきではない。
地味だけども,調整して,より良い社会を作っていくという粘り強さを持つ人たちが必要です。
そういう人をたくさん増やすこと,自分たち自身がそういう人になることが重要だと思っています。 』
今回の選挙結果は,「一般市民の生活を守る」という視点からは,
とても残念な結果。
消費税増税,原発維持など,国民の多数意思に反する方向へと舵を切った。
そして,憲法改悪,国防軍創設へ。
戦争への荷担の道が開かれる可能性を考えると,とても重苦しい気持ちにさせられる。
ただ,一方で、真の民主主義のスタートはここからだと,本気で思っている。
湯浅さんが言うように,民主主義は日々の努力によって醸成されるもの。
一足飛びに発展するものではない。
様々な意見を様々な立場の方が表明し,価値観の違いを表面化させ,
ぶつかり合わせ調整していくことによって民主主義はより成熟していく。
同じ意見を持つ者同士が愚痴を言っていても何一つ変えることはできない。
真の民主主義を実現させるために,そして,より良い社会を子ども達に
引き継いでもらえるように,まずは反対意見を恐れずに自分の意見を
表明することが大切だと考える。
そして,それをするためには,たとえ価値観が違う人と意見が対立したとしてもそれを乗り越えて
その人との人間関係は続けられるはずだという,人を信じる心を持つことが,何よりも必要なのだと思う。
弁護士 西ヶ谷 知成