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絵本の話

雑貨屋で一目惚れして「かわいいから」という理由で付けていたキーホルダ―。

「フレデリック」という絵本のキャラクターであることを最近知って,原作を手に取ってみました。作者はアメリカの絵本作家レオ=レオニです。

フレデリックは,「ちょっと かわった のねずみ」です。
仲間のねずみが冬に備えて,とうもろこしや,木の実や,小麦を集めている間も,フレデリックは座り込んで牧場をじっと見つめています。
仲間が“どうして働かないのか”と尋ねても,フレデリックは,言うのです。
“こう見えたって働いているよ。ひかりを,いろを,ことばを集めているんだ”と。
やがて冬の日が来て,少しずつ,とうもろこしや木の実は減っていきます。みんなが凍えそうになって,何もする気になれなくなってしまいます。
しかしそんなとき,フレデリックの集めてきたひかりが,いろが,ことばが,みんなの心を暖かくし,彩ることができるのでした。

ほんの短いお話ですが,私は,この話の中で素晴らしいのは,フレデリックの仲間たちだと思いました。
彼らは,何の食料も集めず,怠けている様にさえ見えるフレデリックにも,冬がくれば食べ物を分け与えました。仲間たちは,食べ物を集めることだけが働くということではないと知っていたのかもしれません。
光を,色を,言葉を集めている仲間にも,自分が集めた食料を分け与えることができる社会。
そんな社会だからこそ,冬の凍えそうなときに,フレデリックの光で暖まることができたのではないでしょうか。

ところで,どなたのお話だったか失念してしまいましたが,金子みすゞの「私と小鳥と鈴と」という詩を,日本国憲法13条と絡めて紹介された方がいらっしゃいました。憲法13条のいう「全て国民は,個人として尊重される。」というのは,つまるところ「みんなちがって,みんないい」ということなのだと。
私は,憲法の中で,13条が一番好きな条文です。
フレデリックの絵本を読んで,そんなことをふと思い出しました。

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弁護士 西澤 美和子