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夏の思い出。

弁護士の西ヶ谷です。

暑い夏がようやく終わりましたね。
今夏は、自分にとって特別な夏でした。
東京地裁で行われているリニア鉄道差止訴訟に参加する機会を頂いたことが、特別な夏を過ごすこととなった理由です。
静岡県の弁護士の代表(自称・・・)として、9月初旬までにリニア工事による静岡での被害実態の書面を作成し、そのうえで裁判期日当日(9月8日)に意見陳述を行うのが、アタクシの仕事。
東京、神奈川、山梨、長野、愛知の環境問題に精通する気鋭弁護士が弁護団に連なり、高度な議論が飛び交うこともしばしばあるなかで中心的役割を担うことはなかなかのプレッシャーとなりましたが、ひと夏を通じて準備に没頭し、何とか役割を果たすことができました。

その中身のお話。
いま工事が進められつつあるリニア鉄道計画の最大の問題は、環境破壊。
過去に例のない大規模な工事となるため、環境への影響は計り知れないものがあります。
静岡県内で行われる工事自体は、静岡北部の山間部に約11キロのトンネルを掘るという内容。
東京と名古屋とを結ぶリニア計画全体から見れば、ほんの僅か工事にすぎません。
しかし、この工事に伴い様々な環境破壊が発生する恐れがあります。

その中でも重大な環境問題の一つとして懸念されていることは、大井川の水量が減ってしまう、ということ。
工事業者であるJR東海の試算ですら、毎秒2トンの水が大井川から減ってしまう可能性があることが、既に表明されています。
毎秒2トンは大変な量であり、しかも毎秒2トンも事業者の試算ですので、それ以上の減水がないないという保証はありません。

ただでさえ近時、水不足で取水制限が行われている大井川の水が更に減ってしまうと、大井川の水を利用している約63万人の大井川流域の市民の生活に影響が生じてしまいます。
そんなとんでもない工事が今進められようとしていることを、多くの静岡県民に知ってほしいと思います。

JR東海は減水対策として導水路トンネルを掘って本流に水を戻すことを計画していますが、それでも全量は戻りませんし、トンネル区間は水が戻らないため、川が枯渇する恐れもあります。
しかも、導水路トンネルを掘ることによって地下水脈が変わり、支流の沢枯れが生じる恐れがあります。
環境への影響を十分に調査し影響が小さいということであれば止むを得ないとも思いますが、今回のリニア鉄道を国が認可した際には、この点についての十分な調査は行われませんでした。

一度失われた環境は、元には戻りません。
工事が始まった後に、「思ったよりも影響が大きかったね。大井川の水、だいぶ減っちゃったね。」などということは絶対に許されないことです。

都市と都市とをより迅速に結ぶという、人間中心主義に基づくわずかな利便性と引き換えに、多くのものを失う危険性のある、リニア新幹線計画。
しかも、まともな調査も行われずに進められようとしてしまっているのです。
ですから、私は静岡県民として、この工事を容易に認めるわけにはいかないのです。

このひと夏は、このリニア訴訟の準備に尽力しました。
今夏、大井川支流で巨大イワナの群れを目撃したことと同じくらい、自分にとって忘れられない良き思い出になると思います。

弁護士 西ヶ谷 知成

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