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領土問題について思うこと。

昨夜のニュース。

中国で前月の主要日本車メーカーの販売台数が,
前年度の50%~35%減とのこと。

ニュースはこれを深刻そうに報じていたが,「思ったより
売れてるじゃん。」と思ったのは私だけか。

近時の報道を見ていると,日本車なんて一台も売れない
のではないか,という思いにさせられていた。

中国でも少なくない人々が,意外と冷静に日中間の問題を
見ていることがうかがえると,言えなくもない。

先日,村上春樹が領土問題について,こんな発言をしていた
(9月28日付朝日新聞)。

「領土問題が実務課題であることを超えて,「国民感情」の領域に
踏み込んでくると,それは往々にして出口のない,危険な状況を
出現させることになる。

それは安酒の酔いに似ている。
安酒はほんの数杯で人を酔っ払わせ,頭に血を上らせる。
人々の声は大きくなり,その行動は粗暴になる。
論理は単純化され,自己反復的になる。

しかし賑やかに騒いだあと,夜が明けてみれば,あとに残るのはいやな頭痛だけだ。
そのような安酒を気前よく振る舞い,騒ぎを煽るタイプの政治家や
論客に対して,我々は注意深くなくてはならない。

1930年代にアドルフ・ヒトラーが政権の基礎を固めたのも,
第一次大戦によって失われた領土の回復を一貫してその政策の
根幹に置いたからだった。
それがどのよう結果をもたらしたか,我々は知っている。」

年月をかけて多くの人が心血を注ぎ,日本とアジア諸国との
関係修復に尽力してきた結果もたらされた,東アジアの平和。

それが,お互いの無遠慮な主張により,あっという間に崩れ去った。

東アジアの平和は,これまで微妙な国家間の遠慮や気遣いの上に
成り立っていたということが,今回の問題で骨身に染みる程よく分かった。

でも,これはまさに,日々の人間関係と同じ。
価値観が違う人とも仲良くやっていくためには,言いたいことも多少
遠慮して,相手の言い分にも聞く耳を持つ。

私たちが,良好な人間関係を保つために普段当たり前のように
やっていることが国家間において出来なかったのが,今回の問題の
大きな原因のひとつだと思う。

国家は人間の集合体なのだから,隣国との関係においてもこのような
当たり前のことを実践することから,また始めていくしかない。

まずは,隣国の主張に耳を傾けることが肝要。

中国人や韓国人がどうしてそこまで怒るのか,その理由を理解しようと
することから,関係修復が始まると思う。

他方,間違っても我々がヒトラーの再来を選択してはならないことは,
歴史が証明していることである。

「憲法を改正して他国から国民を守る!」などと声高に叫ぶ政治家には,
特に注意しなければならない。

また,今回の尖閣諸島問題が,某都知事の発言から始まったことも
忘れてはならない。

村上春樹は言う。
「政治家は威勢のよい言葉を並べて人々を煽るだけで済むが,実際に
傷つくのは現場に立たされた個々の人間なのだ。」

弁護士 西ヶ谷 知成