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年頭所感。

弁護士の西ヶ谷です。

皆様,明けましておめでとうございます!
正月休みもあっという間に終わり,新年のスタートですね。
当事務所は1月7日からの営業ですが,私は今日が仕事始めです。

さて,年頭所感を書こうとして真っ先に頭に浮かぶのが,今の政治の悪さ。もう,最悪としか言いようがないです。

残念ながら今年も安倍政権下での軍事優先・弱者切り捨ての悪政が当面は続きそうですので,社会的に弱い立場に置かれた方々の問題が引き続き多数生じることとなるでしょう。

特に,子どもの貧困(母子家庭の貧困)の問題や,労働問題,中小企業の経営問題等がより深刻になってくると思われます。

私たち静岡第一法律事務所は,地方の一法律事務所ではありますが,日々ご依頼いただく案件に精いっぱい向き合いつつ,そのような社会問題にも正面から向き合って行きたいと思っています。

そして,そのような法律事務所ないし法律家でいられるように,私自身,毎朝の判例研究を欠かすことなく自己研鑽に励み,また新聞やニュースになるべく細かく目を通して社会問題に対する感覚を磨くことを今年も心掛けていきたいと思っています。

また今年は,事務所の弁護士全員で取り組んでいる旧優生保護法下での強制不妊手術問題や年金切り下げを巡る訴訟にも大きな動きがある年になりそうですので,事務所を挙げて精いっぱい取り組んでいきたいと思っています。

今年も慌ただしく,あっという間に終わってしまう一年になりそうですが,それでもそのような日々に流されることなく,自分の立ち位置を見失うことなく,一日一日を大切に生きていきたいと思います。

弁護士 西ヶ谷 知成

仕事納め。

弁護士の西ヶ谷です。

昨日で仕事納めにしたかったのですが終わらず,今日が仕事納めになってしまいました。

今年は新規相談1000件以上,ご依頼件数250件と,これまでの弁護士人生の中で最も忙しい一年となりましたが,新人弁護士の成長と事務局の頑張りに支えられ,何とか無事一年を終えようとしています。

過労でクタクタになっている私を陰で支え励ましてくれた方々にも深謝です。

数ある法律事務所の中で当事務所をお選びいただいた皆様のご期待に応えられるよう,来年も引き続き頑張っていこうと思っています。

さて,今年の日本を振り返ると,国際社会に背を向ける出来事が目立ったように思います。

上半期には,北朝鮮をめぐるアメリカや東アジア諸国の対話の動きに日本は積極的に加わりませんでしたし,唯一の被爆国であるにもかかわらず核兵器禁止条約にも参加しませんでした。

また,国際機関から再三にわたり廃止すべきとの勧告を受けているにも関わらず大量の死刑執行をし,つい先日も自国の意見が通らないからとIWC(国際捕鯨委員会)からも脱退してしまいました。

さらに,ゴーン氏の逮捕・勾留をきっかけに世界から「人質司法」と揶揄された司法制度の問題についても,見直す動きは出てきていません。

日本は国際社会からどんどん孤立していっているにもかかわらず,相変わらず「日本凄い」との自画自賛のテレビ番組も多く放送されているようですし,日本の歴史を曲解し美化する書籍もベストセラーになっているようですね。

国際社会において,日本が「非常識な恥ずかしい国」になりつつあるという不都合な現実に,そろそろ目を向けるべきだと思います。

弁護士 西ヶ谷 知成

安田純平さん、無事帰国。

弁護士の西ヶ谷です。

安田純平さんの無事帰国、本当に良かった!
彼は、身を挺して、私たちの知りえないシリア内戦について、取材を試みてくれました。

シリアに起こった出来事を短くまとめると、
民主化運動(シリアの春)→アサド政権による民主化鎮圧のための武力行使→反政府勢力と政府軍との戦い→その混乱に乗じたISの台頭。

このような混乱の中で、爆弾が落ちて町を破壊する映像、車両が爆破される映像、毒ガスにより一般市民が折り重なるように息絶えている映像、血まみれの幼児の映像などが私たちのもとに届けられ、同じ時代を生きる一人の人間として絶望感を覚えながらニュースを見聞きしていました。

そういったニュースは、危険な地域に足を踏み入れる彼らジャーナリストの取材によって、私たちのもとに届けられています。

戦場ジャーナリストに対しては、様々な意見があります。
危険な地域に入ったことで結果的に多くの人に迷惑をかけたではないか、という否定的意見も全く理解できないわけではありません。
しかし、紛争地域で何が行われているのか、どのような悲惨な状況にあるのかということは、戦場の真実、ひいては今の世界や今という時代を知るうえで極めて重要です。歴史の真実の一端が、そこにあります。
ですので、その真実の一端を多くの人に知らせるための活動は、極めて大きな社会的価値があると私は思います。

今後は彼の経験を多くの人に知らせるような執筆活動や講演活動をしてもらえると嬉しいな、と思います。

弁護士 西ヶ谷 知成
シリア1
In this frame grab taken from video provided by the Syrian anti-government activist group Aleppo Media Center (AMC), a child sits in an ambulance after being pulled out or a building hit by an airstirke, in Aleppo, Syria, Wednesday, Aug. 17, 2016. Syrian opposition activists reported an airstrikes on the al-Qaterji neighborhood in Aleppo late Wednesday. (Aleppo Media Center via AP)
シリア※1シリア※2TOPSHOT - Syrian men carrying babies make their way through the rubble of destroyed buildings following a reported air strike on the rebel-held Salihin neighbourhood of the northern city of Aleppo, on September 11, 2016. Air strikes have killed dozens in rebel-held parts of Syria as the opposition considers whether to join a US-Russia truce deal due to take effect on September 12. / AFP / AMEER ALHALBI        (Photo credit should read AMEER ALHALBI/AFP/Getty Images)

あれから3年。

弁護士の西ヶ谷です。

2015年9月19日に安保法制(戦争法)が成立してから今日でちょうど3年。
3年前には国会前で大規模な反対集会やデモが行われ,私も自作のアピールボードを持参して何度か参加しました。

国民の大半が反対か,あるいは説明が不十分と考えていたにもかかわらず,安倍政権によって強引に進められ成立してしまった安保法制。
今回の総裁選の中で,安倍氏は「安保法制によって抑止力が高まった」などと発言していますが,安保法制が成立した後に日本の上空を北朝鮮のミサイルが飛んだり,戦争になりそうなほど米朝の緊張が高まったりしたことは歴史的事実。
安保法制によって抑止力が高まったなどということは全くないのに,よくもそんな出鱈目なことが言えるなー,と呆れながら聞いています。

近時の北朝鮮をめぐる緊張緩和は,アメリカや韓国の外交の成果。
やはり,平和は圧力ではなく外交でしか成し遂げられないことが,近時の東アジア情勢からも明らかになりました。

これからの日本は,この枠組みの中で,対話による東アジアの平和を構築する努力をすべきだと思います。
そして,そのための重要な役割を果たすのが,憲法9条。
憲法9条の理念(非武装平和主義)の実現を目指して世界に働きかけていくことこそが,今の日本に求められる役割だと思います。

憲法9条を変えるのではなく,生かす。
この発想がとても大切だと思います。

弁護士 西ヶ谷 知成

「不当決定」の旗を掲げて

弁護士の西澤です。
私が,弁護団の一員として関わっている「袴田事件」について,6月11日に,東京高等裁判所である決定が出されました。
昭和41年,静岡市清水区(旧清水市)で味噌会社役員の一家4人が殺害され,金品を奪われた上に自宅に放火されるという事件が起きました。味噌会社の従業員であった袴田巌さんは,無実であるにも関わらず,この事件の犯人とされて死刑判決を受け,約50年にもわたり身柄を拘束されてきました。
平成27年3月に静岡地方裁判所で再審(もう一度裁判をやり直すこと)の開始決定が出されましたが,検察がこれに対して不服を申し立てており,再審を開始するかどうかを東京高裁で争ってきました。
東京高裁の決定当日,私は,決定が出た直後に裁判所の前で旗を掲げて,集まった支援者の方々や報道関係者に結果を知らせるという役目をいただいていました。直前まで私は,静岡地裁の再審開始の判断が維持されると信じていましたので,手には「再審開始」の旗を握りしめ,今か今かと待っていました。しかし,決定を受け取った弁護人からの電話口に聞こえてきたのは「不当決定」の声。裁判所の前で「不当決定」と書かれた旗を広げた瞬間,支援者の方々の表情が固まり,時間が止まったかのように感じました。すぐに,「こんなの絶対おかしい!」「不当だ!」という悲鳴に近いような声があちこちから聞こえてきました。
東京高裁では,審理の多くの時間がDNA鑑定の信用性という問題に費やされてきました。静岡地裁では,複数の鑑定人が,犯人が犯行時に着用していたとされる「5点の衣類」DNA鑑定を行い,鑑定人の内の1人は,衣類に付着した血液のDNA型が被害者のものとも袴田さんのものとも一致しないという結果を出していました。しかし,東京高裁の決定は,この鑑定人の鑑定手法や鑑定結果が信用できないと判断したのです。
私は,DNA鑑定に関する決定についても,おかしいと思うところはありますが,何よりも,DNA鑑定以外の証拠についての判断に疑問を感じています。例えば,袴田さんは犯人のものとされるズボンをはくことができません。サイズが小さすぎるのです。これに対して,高裁はズボンが味噌に漬けられる前はもっと大きかったはずであるし,袴田さんは逮捕後に太ったから,犯行当時はズボンがはけたはずだと認定しました。このように一つ一つ判断されてしまうのでは,袴田さんに有利な証拠があっても,見方によって結論がいくらでも変わってしまう恐れがあります。「5点の衣類」には,ズボンがはけない,シャツに開いた穴が袴田さんの身体の傷跡と一致しない,ズボンの下にはいていたステテコにズボンより多く血が付いているなど,不自然な点が多々ありますので,これらを総合的に判断するべきです。
6月18日に,弁護団は今回の決定に対して最高裁判所に特別抗告という不服申立をしました。これからは,最高裁に審理の場がうつります。
決定後,沈んでいた弁護団に対して,巌さんの姉・秀子さんは,「50年闘ってきたんだから」と,いつものように明るい言葉を掛けてくださいました。私も,秀子さんの強さを見習い,前に進んでいきたいです。