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安田純平さん、無事帰国。

弁護士の西ヶ谷です。

安田純平さんの無事帰国、本当に良かった!
彼は、身を挺して、私たちの知りえないシリア内戦について、取材を試みてくれました。

シリアに起こった出来事を短くまとめると、
民主化運動(シリアの春)→アサド政権による民主化鎮圧のための武力行使→反政府勢力と政府軍との戦い→その混乱に乗じたISの台頭。

このような混乱の中で、爆弾が落ちて町を破壊する映像、車両が爆破される映像、毒ガスにより一般市民が折り重なるように息絶えている映像、血まみれの幼児の映像などが私たちのもとに届けられ、同じ時代を生きる一人の人間として絶望感を覚えながらニュースを見聞きしていました。

そういったニュースは、危険な地域に足を踏み入れる彼らジャーナリストの取材によって、私たちのもとに届けられています。

戦場ジャーナリストに対しては、様々な意見があります。
危険な地域に入ったことで結果的に多くの人に迷惑をかけたではないか、という否定的意見も全く理解できないわけではありません。
しかし、紛争地域で何が行われているのか、どのような悲惨な状況にあるのかということは、戦場の真実、ひいては今の世界や今という時代を知るうえで極めて重要です。歴史の真実の一端が、そこにあります。
ですので、その真実の一端を多くの人に知らせるための活動は、極めて大きな社会的価値があると私は思います。

今後は彼の経験を多くの人に知らせるような執筆活動や講演活動をしてもらえると嬉しいな、と思います。

弁護士 西ヶ谷 知成
シリア1 In this frame grab taken from video provided by the Syrian anti-government activist group Aleppo Media Center (AMC), a child sits in an ambulance after being pulled out or a building hit by an airstirke, in Aleppo, Syria, Wednesday, Aug. 17, 2016. Syrian opposition activists reported an airstrikes on the al-Qaterji neighborhood in Aleppo late Wednesday. (Aleppo Media Center via AP) シリア※1シリア※2TOPSHOT - Syrian men carrying babies make their way through the rubble of destroyed buildings following a reported air strike on the rebel-held Salihin neighbourhood of the northern city of Aleppo, on September 11, 2016. Air strikes have killed dozens in rebel-held parts of Syria as the opposition considers whether to join a US-Russia truce deal due to take effect on September 12. / AFP / AMEER ALHALBI        (Photo credit should read AMEER ALHALBI/AFP/Getty Images)

あれから3年。

弁護士の西ヶ谷です。

2015年9月19日に安保法制(戦争法)が成立してから今日でちょうど3年。
3年前には国会前で大規模な反対集会やデモが行われ,私も自作のアピールボードを持参して何度か参加しました。

国民の大半が反対か,あるいは説明が不十分と考えていたにもかかわらず,安倍政権によって強引に進められ成立してしまった安保法制。
今回の総裁選の中で,安倍氏は「安保法制によって抑止力が高まった」などと発言していますが,安保法制が成立した後に日本の上空を北朝鮮のミサイルが飛んだり,戦争になりそうなほど米朝の緊張が高まったりしたことは歴史的事実。
安保法制によって抑止力が高まったなどということは全くないのに,よくもそんな出鱈目なことが言えるなー,と呆れながら聞いています。

近時の北朝鮮をめぐる緊張緩和は,アメリカや韓国の外交の成果。
やはり,平和は圧力ではなく外交でしか成し遂げられないことが,近時の東アジア情勢からも明らかになりました。

これからの日本は,この枠組みの中で,対話による東アジアの平和を構築する努力をすべきだと思います。
そして,そのための重要な役割を果たすのが,憲法9条。
憲法9条の理念(非武装平和主義)の実現を目指して世界に働きかけていくことこそが,今の日本に求められる役割だと思います。

憲法9条を変えるのではなく,生かす。
この発想がとても大切だと思います。

弁護士 西ヶ谷 知成

「不当決定」の旗を掲げて

弁護士の西澤です。
私が,弁護団の一員として関わっている「袴田事件」について,6月11日に,東京高等裁判所である決定が出されました。
昭和41年,静岡市清水区(旧清水市)で味噌会社役員の一家4人が殺害され,金品を奪われた上に自宅に放火されるという事件が起きました。味噌会社の従業員であった袴田巌さんは,無実であるにも関わらず,この事件の犯人とされて死刑判決を受け,約50年にもわたり身柄を拘束されてきました。
平成27年3月に静岡地方裁判所で再審(もう一度裁判をやり直すこと)の開始決定が出されましたが,検察がこれに対して不服を申し立てており,再審を開始するかどうかを東京高裁で争ってきました。
東京高裁の決定当日,私は,決定が出た直後に裁判所の前で旗を掲げて,集まった支援者の方々や報道関係者に結果を知らせるという役目をいただいていました。直前まで私は,静岡地裁の再審開始の判断が維持されると信じていましたので,手には「再審開始」の旗を握りしめ,今か今かと待っていました。しかし,決定を受け取った弁護人からの電話口に聞こえてきたのは「不当決定」の声。裁判所の前で「不当決定」と書かれた旗を広げた瞬間,支援者の方々の表情が固まり,時間が止まったかのように感じました。すぐに,「こんなの絶対おかしい!」「不当だ!」という悲鳴に近いような声があちこちから聞こえてきました。
東京高裁では,審理の多くの時間がDNA鑑定の信用性という問題に費やされてきました。静岡地裁では,複数の鑑定人が,犯人が犯行時に着用していたとされる「5点の衣類」DNA鑑定を行い,鑑定人の内の1人は,衣類に付着した血液のDNA型が被害者のものとも袴田さんのものとも一致しないという結果を出していました。しかし,東京高裁の決定は,この鑑定人の鑑定手法や鑑定結果が信用できないと判断したのです。
私は,DNA鑑定に関する決定についても,おかしいと思うところはありますが,何よりも,DNA鑑定以外の証拠についての判断に疑問を感じています。例えば,袴田さんは犯人のものとされるズボンをはくことができません。サイズが小さすぎるのです。これに対して,高裁はズボンが味噌に漬けられる前はもっと大きかったはずであるし,袴田さんは逮捕後に太ったから,犯行当時はズボンがはけたはずだと認定しました。このように一つ一つ判断されてしまうのでは,袴田さんに有利な証拠があっても,見方によって結論がいくらでも変わってしまう恐れがあります。「5点の衣類」には,ズボンがはけない,シャツに開いた穴が袴田さんの身体の傷跡と一致しない,ズボンの下にはいていたステテコにズボンより多く血が付いているなど,不自然な点が多々ありますので,これらを総合的に判断するべきです。
6月18日に,弁護団は今回の決定に対して最高裁判所に特別抗告という不服申立をしました。これからは,最高裁に審理の場がうつります。 決定後,沈んでいた弁護団に対して,巌さんの姉・秀子さんは,「50年闘ってきたんだから」と,いつものように明るい言葉を掛けてくださいました。私も,秀子さんの強さを見習い,前に進んでいきたいです。

「闘いとってきた変化」

今朝(5/23)の朝日新聞に掲載されたジェンダー研究のパイオニア,上野千鶴子氏(社会学者)の文章が示唆に富んでいたので,一部をブログで紹介したい。

『「からかい」や「いたづら」をセクハラと名付け,「痴話げんか」をDVと名付けて,女性の経験を再定義してきたのは,フェミニズムである。
「痴漢は犯罪です。」というポスターを東京都の地下鉄で見たときの感動は忘れない。
これらは日本の女性運動の達成した成果である。
変化は自然現象のように起きたのではない,闘いとってきたのだ。
学問は何のために役立つのかと言われながら,女性の経験の言語化と理論化に努めてきたのが女性学・ジェンダー研究だった。』

長年にわたる粘り強い運動の積み重ねが社会を少しずつより良く変えるのであり,自然に変わっていくことは期待できない。
社会をよりよく変えたいのであれば,待っているのではなく闘いとるという意識が必要。

上野氏の記事から,分かり易い結果を求めがちな昨今の自分を振り返る切っ掛けを頂いた。

では,法律家は何に役立つのか。

日々自問自答しながら仕事に臨みたいと思う。

弁護士 西ヶ谷 知成

憲法集会にて。

昨日は憲法施行71年目を迎える憲法記念日。

静岡市でも憲法集会が開かれ500人が集まりましたが、そこでスピーチをするよう事前に依頼されていました。

スピーチ用の原稿を作成しましたので、ブログにアップさせていただきます。

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私は静岡市で弁護士をしている西ヶ谷知成と申します。
静岡県憲法9条の会の事務局長を務めている関係で、本日お話しさせていただく機会をいただきました。

まず、この静岡県憲法9条の会について、少しだけ紹介させてください。
「9条の会」と名が付く組織は静岡県内にも多数ございまして、私が把握しているだけでも70くらいございます。
その県内の「9条の会」の横のつながりを作るために2004年に作られたのが、静岡県憲法9条の会です。
この静岡県憲法9条の会は、近時は休眠状態となっておりましたが、第2次安倍政権下で9条が危ない、ということで、昨年再結成されました。

主な活動といたしましては、今年2月25日に伊藤真弁護士を招き集会を行ったほか、2~3ヶ月に1度、各地の経験交流を目的とした意見交換会を行っています。

先日行われたこの意見交換会で印象深いやりとりがありましたので、ここで紹介させていただきます。

まず、ある方から次のような問いかけがなされました。
「改憲反対のための多くの署名を集めるためには、賛同者だけからだけ集めていても達成できない。意見の異なる方にも積極的にアプローチしていかなければならないと思うが,どのようにやっているのか。」。
そのような問いに対して、ある方から次のような意見が出されました。
「私は時間がかかっても、諦めずにねばり強く対話をしている。1件に30分、1時間かかることもある。どれだけ時間がかかっても途中で切り上げるようなことはしない。」。
私は、その意見を聞いて大変驚きました。意見が違う方に賛同の署名を求めることが無理であれば、早々に引き上げて次にチャレンジした方が多くの署名を集めることが出来ます。
でもその方はそのような効率重視ではなく、時間がかかってでも対話を重視する姿勢を貫いている。
私は、まさに、こういう人とのぶつかり合いを恐れないで粘り強く対話を続ける地道な活動こそが、よりよい社会へと換えていくための原動力になるのではないか、ということに気づかされました。
この方の姿勢に大変感銘を受けましたので、今日の機会にご紹介させていただきました。
なかなかまねできないことだと思いましたが、きっと今日お集まりの皆様の中にも、このような活動を行っている方もおられることと思います。私も少しでもこのようなすばらしい活動に近づけるよう、自分なりにがんばっていきたいと思います。

今日現在、政治情勢は流動的であり、改憲の動きが今後どうなるかは分かりません。
しかし、憲法9条が掲げる非武装平和主義は、世界に向けた日本の約束であり、戦争犠牲者の魂の叫びであり、人類の道しるべでもあります。
私たちの世代でこの非武装平和主義の理想を捨てるわけにはいきません。私たちには、次世代にこの普遍的価値を引き継ぐ義務があります。
ですから,改憲に向けた動きが鈍ったとしても、それで終わりではありません。

憲法12条には次のような定めがあります。
「この憲法が国民に保障する自由及び権利は,国民の不断の努力によって,これを保持しなければならない。」
権力者による憲法破壊,立憲主義破壊の怖さを肌身で感じた今の時代ほど,この条文の重みを感じさせられたことは,これまでなかったのではないでしょうか。

ですから、皆さん、これからが大切です。
ともに不断の努力を重ねていこうではありませんか。

皆さん、共にがんばっていきましょう。

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もちろん当日は紙を見ずに暗記して話しましたよ(^^)v
SBSが夕方のニュースで報道してくれました。深謝。

弁護士 西ヶ谷 知成