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選挙のビラを配布して,逮捕?!

とっても小さくしか報道されていないが,ひどい事件が起こったのでブログを書く。

12月8日,東京都三鷹市で,団地のドアポストに法律で認められている選挙のビラを投函した方が,警察に逮捕された。

容疑は,住居侵入罪。

団地は分譲マンションとは異なり,誰でも入ることができる開放的な建物。
日常的に宅配ピザのチラシも入れられるような団地なのに,である。

逮捕した警察から送致を受けた検察官は,さらなる身柄拘束をすべく勾留請求を行った。
しかし,昨日,東京地裁立川支部は,勾留請求を却下し,身柄拘束を認めない判断を下した。

良識ある裁判官の判断で,ビラを入れた方は長期の身柄拘束をされずに済んだ。

しかし,住居の平穏が害される危険性が全くないビラまき行為に対し,逮捕までしてしまうということは,明らかに行き過ぎである。

逮捕した警察の行為,勾留請求をした検察の行為は,憲法で認められている表現の自由(21条)を侵害するものであり,
絶対に許されないものと考える。

そもそも,憲法は,他の法律と違い,国家権力から国民の権利や自由を守るためのもの。
そして,選挙活動の自由に代表される表現の自由(憲法21条)は,
特に時の為政者から侵害されやすいため,それを制限するには特別な理由が必要とされる。

このことは,大学の「憲法」の授業で一番最初に教わる部類の,
近代憲法の最も基本的な事項の一つである。

しかし,このような憲法の基本が平然と踏みにじられる事件が,
今の日本で起こっているのである。

憲法が表現の自由を認めていなければ,今回の事件でもビラを撒いた方が
早期に釈放されることはなかったであろう。
今の憲法があるからこそ,政治批判を含め,自由に言いたいことを言える社会が成り立っている。
今回の事件を通して,そのことを改めて実感させられた。

今回の衆議院選挙では,憲法「改正」も争点の一つとなっている。

もし,憲法が「改正」され,自民党草案のように,「公のため」に国民の権利を制限することを憲法自体が認めることになれば,
今回のような事件が頻繁に起こるようになることは,確実である。

また,言いたいことを自由に言える今の日本社会は,自由が制限される方向へと形を変えていく可能性がある。

こういったことも念頭に置きつつ,選挙に臨みたいと思う。

弁護士 西ヶ谷 知成