静岡大学の笹沼教授と自由法曹団所属弁護士とで闘ってきた生活保護訴訟。
提訴から4年半の歳月を経て,先週,勝訴判決を得ることが出来た。
この裁判は,市の担当者の指示に従わないことを理由に生活保護の支給を停止した静岡市の処分について,その取消を求めるもの。
真に保護が必要な方であったにもかかわらず,保護停止の強権を発動した静岡市の対応の是非が問われた。
そして,静岡地裁は我々の主張を認め,生活保護の停止処分は違法であるとの判断を下した。
生活保護を受ける必要がない大多数の静岡市民からすると,この裁判は自分とは関係ないように感じるかもしれない。
しかし,人の人生は,いつ何が起こるか分からない。
万が一何か不幸なことが起きたとしても,それでもなんとか安心して生活できるために用意されているのが,生活保護制度をはじめとするセーフティーネット。
つまり,セーフティーネットは一般市民が安心して生活できるためのもの。決して生活保護受給者のためだけにある制度ではない。
不正受給がとりざたされている昨今ではあるが,生活保護制度自体は市民生活に不可欠なものであり,万が一の時にも安心な「保険」として正常に機能していなければならないのである。
だから,この裁判は,静岡市民全員に関係するものであって,私たちも静岡市民の代表として,市民生活を守るという観点から,どうしても勝たねばならなかった。
だから,この訴訟で私たちの主張が認められて,正直ホッとしている。
もっとも,本判決では,市の職員の責任(国家賠償請求)の部分については,棄却された。
杜撰な運用を行ってきた市の責任が本判決では不問にされた点で,不満が残る。
静岡市民を代表して,完全勝訴を目指して最後まで尽力していきたいと思う。
弁護士 西ヶ谷 知成