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生活保護制度について考える。

生活保護の不正受給等がマスコミをにぎわすようになり,
生活保護受給要件の厳格化や支給金額の切り下げを行うべき
という世論が出来つつある今日この頃。

でも,そういう方向に進んでいってしまっては良くないと
個人的には思っている。

そのことについてブログに書こうと思う。

生活保護は,生活困窮者のための制度であるが,他方,利用しない
市民にとっても,平穏な生活を送るためのセーフティーネット(安全網)
という役割を果たしている。

静岡大学の笹沼教授が以前,講演会で次のような話をしてくれた。

「 安全網は,綱渡りをする人が万が一落下しても大丈夫なように用意されている物。

いくら綱渡りが上手な人であっても,安全網がなければ,怖くて渡ることは出来ないはず。

つまり,安全網は,綱渡りが出来ない人のための物ではなくて,
綱渡りをする人が,万が一,綱から落ちても大丈夫なように用意してある物である。

生活保護制度も同じ。

今,生活が出来る人であっても,いつ何があるか分からない。
そういう何かあったときにも困らないように,生活保護制度がある。

その制度が充実していることによって日々安心して暮らせる社会になる。

つまり,生活保護制度は,生活保護制度を利用していない人たちのための制度でもある。 」

生活保護の不正受給は許されることではない。

しかし,その風潮から生活保護受給要件の厳格化や支給金額の切り下げに
向かっていってしまうのは,セーフティーネットを弱めることになる

そして,そのツケを払わせられるのは,我々自身なのである。

弁護士 西ヶ谷 知成