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「あなたたちの沈黙が私たちを殺す」

昨日の朝,こたつでお茶をすすりながら目にした新聞記事の見出し。

「あなたたちの沈黙が私たちを殺す」

シリア内戦で反政府派の拠点がアサド政権側から激しい空爆を受け,住民数百人が犠牲になったというニュース。
この言葉は死にゆく男性からの最後のメッセージだったという。

そういえばその前夜のニュースで,負傷したり死亡したシリアの子供たちの映像が映されていたことを思い出した。

その映像を見て痛ましさを感じつつも,「内戦がここまで激化してしまうと,どうしようもないよな・・・」などと,半ば自分への言い訳めいた感想を心中に抱いたことを思い出した。

その翌朝の記事の見出しがこれだったので,まさに「あなた」=自分のことを言われたような気がして,それ以来,この記事のことが頭の片隅からずっと離れない。

なので,まとまらないことを承知でブログに書くことにした次第。

では自分に何ができるのか。

何もできない。現場に行って救護活動を手伝うことすらできない。

ただ,こういう悲惨な事態を繰り返さないためにはどうしたらいいのか,ということを真剣に,誠実に考え,それを発信する程度のことは私にも出来ると思った。

まず,シリア内戦が拡大してしまったのは,ISの出現と,対立している双方当事者の背後に大国がいること。
もともとは「アラブの春」つまり中東民主化の流れの中で,民主化を求めていた反政府派がアサド政権を追い詰めたが,ISが出現して三つ巴の内戦となってしまい,またロシアやフランスがアサド政権側につきアメリカが反政府勢力を支援するなど大国が干渉し,内戦が激化した。
大国の狙いは様々だが,中東での覇権拡大が大きな理由の一つ。

まずは,このような大国のエゴを容認するような世界情勢を変えねばならない。
武器で儲かる死の商人が政治を牛耳っている点も原因の一つだ。

では,このような世界を変えていくために,必要なことは何か。
やはり,それは,武力の行使を禁じた日本国憲法9条の理念を世界に広めていくことではないか,と私は考える。

いま,憲法9条を変える動きが議論されているが,憲法に自衛隊を書き込まねば自衛隊員がかわいそうだ,などというちっぽけな感情論ではなく,今の憲法が持っている非武装平和主義の価値を理解し,その非武装平和主義の理想を実現する努力をすべきだと思う。
改憲をするのではなく,今の憲法の理念を実現する,という方向性だ。

軍事力による威嚇は,相手に恐怖心を与えて紛争ぼっ発の危険を高めこそすれ,真の平和にはつながらない。

それは北朝鮮に対しても同じ。

北朝鮮とも対話ができるような環境を,周辺国と協同して作っていくことが必要。
中国は北朝鮮に対してまだ影響力があるし,今の文政権の韓国とも手を組めば融和ムードは高まる。
だから,非現実的な話などではなく,努力していく価値は十分にある。

また,北朝鮮の硬直姿勢を解くためには米軍基地の縮小,撤去も必須だ。

他方で,トランプ政権のアメリカに追従してくことが最も平和から遠のくことであることは明らかだ。

大河の一滴に過ぎない自分ではあるが,9条の理念を実現するためにどうあるべきか,ということにこだわって生きていこうと思う。
これが,死にゆくシリア男性のメッセージに対する,自分なりの答えである。

弁護士 西ヶ谷 知成